塩 分


 8月29日(日) 塩分の増援たのむ
 面会日である。今日が最後の面会日であることをただ祈る。今、僕の体内はおいしい食べ物の要求で満ち満ちている。・・・が、そんな物は入ってこない。
「航空ファン」と「ブロンディ2」に、資料は「ヘルキャット」の代わりに「ワイルドキャット」を買ってきた。
 あと少し読みたかったがモデラートなどを持って帰ってもらった。そして、この次の要求として、塩分を増援してもらうことにした。

 まあ、スナックのような菓子だが、これ位はおいしものもたべたい。それに、もう学校も始まる。コチトラもうかうかしてられない。そして、医師達は顔を見せない。・・・ああ・・・

持ってきて欲しいもの
  ポパイブックス 2冊あるからどれか1つ  →文鳥堂にアル
  ピーナツブックABCのいずれか1冊  →なるべくC
  万年筆スペアインク(黒をもって来ないように) →オレの机の引き出し
  黒インクの入った万年筆  →パパの机の上にアル
  科学の本とノート(第1分野 小さい)
  HAND WRITING(横にとめてあるうすい本)

それとパパへ――
  沖縄決戦(映画)はママか他の人と行って下さい。30日まで退院はムリのようです。
  沖縄決戦のプログラムは必ず買って僕の所へもって来ること。
  ラジオはどうもありがとう。毎日聞いて楽しんでいます。24日は、ベートーベンの交響曲8番がありました。


 8月30日(月)  肉料理が必要だ
 オレからの退院に関する質問をさけるためか、土屋先生も、もち、井原先生なども、月曜日になってもいっこうに来ない。ダマリ戦術で来たが、相手は一体どの程度に思っているのか?
 外来では、秋山先生が手術に行っていて、ずい分待たされた。引っ張りだことは、ずい分忙しそうだ。しょちはいつもと同じで、もうデッカイ バンソウコウのようなものははらずに、バンドエイドをはるだけでよくなった。あと、2、3日で糸も引き抜くだろう。

 ハラが減っている。
 「ぼでじゅう」へ行き、焼きそばにお好み焼き2人前喰いたい。ビフテキが喰いたい。(スーパーデューパーでもいい)ジンギスカン、バーベキュー、ああ・・・ラムでも喰いたい。うまい肉料理が喰いたい
 力の全てが空中にういているような気持ちだ。ダメだ。うまい肉料理が必要だ。(「ぼでぢゅう」へつれていけ!)


 8月31日(火)  第1の欲望は
 朝、起きてみると外はうす暗く、風と雨で大混乱だった。横なぐりに霧のような雨が死のテニスコートをさらうようにしていた。窓まで押し寄せるので窓まで閉めなければならぬ。・・・が、窓なんか閉めたら(風雨+ガラスのよごれ)で、もう、すぐ下の古屋くらいしか見えない。全くすごいものだ。
 家ではどんな有様だろうか? まず、自転車はあきらめた方がよさそうだ。アサガオはたいへんなことだろう。
 今、外は風なのか雨なのかのすごい音で、その音がまるで海の波のように聞こえてくる、というようなものすごさだ。

 今日で8月は最後だ。皆は明日から学校へ行くだろう。(いや、きっと行く)そしてオレは、ダマリ戦術において全く反攻の力を失い・・・とうとう第2学期が始まっちゃうのに、とりのこされなければならない不都合な運命にある。
 だんだん、オレのまわりが真っ暗やみになっていくようでやな感じだ。
 だが、今のオレの第1の欲望は家に帰ることではない?
 もう、そんなことをいうヒマもなく、人間そのまま本位の欲を求める。つまり! うまい食べ物の早期補給を要求しているのだ!!!

 今日、外来へ行く際、下に行ったらかん者がずい分少ない。あれェ? 火曜日はこんなに少なくなるものかなあと考えたら、外が台風で人数が少ないはずだ。いや少ないのは人数だけじゃない。先生もだ。秋山先生がまだ来ていなくて、病とうの方で待つことにして帰った。
 帰る途中、『肺機能検査室』のドアがあいていたのでのぞいてみた。ここはオレをひどい目にあわせた所だ。すると(のぞいていると)中から井原先生が出て来て「何?」と聞いたので、とつじょのできごとにこちとらはびっくりして、「いや、外科の帰りに立ち寄っただけです。」と言っておいた。
 再び呼び出されて外来に行く。秋山先生はとうとう来ないみたいで、僕に手を下したお医者さんがみてくれた。「もう、いいや」とかいって、今日は糸を抜いた。チクッチクッとするどい痛みはあったが、すぐすんだ。

 バンドエイドをはって戻る途中、もう一度『肺機能検査室』を少しのぞいてみると、石田先生らしい人影がレントゲンを数枚見ていた。
 外は、なかなか雲行きがよくなってくれない。つまり荒れ模様で、ラジオでは台風ニュースでもちきり。(あさっては晴れてくれないと塩分がしけっちゃう)


 9月1日(水)  新学期だというのに
 昨夜から薬がかわったら、もう朝は熱が8度以上出た。夜の薬の結果がこうも早く出るものかと、いささかおそろしくなった。何か、また退院が遠くなったような気持ちだ。それに今日から新学期なのでマスマス頭が重い。 
 外はもうすっかり晴れてくれた。隣の子供は大部屋に行ったらしい。すわると頭のまわりがぼんやりとあたたかいだけだが、寝て氷まくらにあたると、とたんに寒くなってしまうのが困る。
 もう新学期だが、井原先生は何を考えているのか!?

 昼になったら寒気も少しおさまり、いくらか楽になった。熱はいぜん下らない。まだ少しフラフラする。今日はそういうわけでほとんど1日中氷まくらで寝ていた。

 ぬけぬけと・・・?! 今日も井原先生がやってきた。目の事を言おうと思ったがやめた。ブツブツ言って、足をめくって帰って行った。いったいどんな事を考えているのだろう?
 ――
 もう勉強が始まった。1日1日勉強をこっちでもやらなければならなくなくなる。そういう時、熱が出ていると苦しいので、もとの薬に戻してほしいものだ。


 9月2日(木)  面会日に検査
 熱はいぜん出ている。ラジオを聞きながら午前中は眠る。外科へ行ったら、もうバンドエイドははらなくてもよいということ。はじめてキズを見ると、もう細いスジとなってキレイになっていた。
 さて今日は面会日だが、途中からアイソトープ室に行かなければならなくなって、ろくに話もできなかった。イザ部屋に入ってからやっと用意を始めて、という具合に、ずい分アイソトープ室内の先生の行動がゆっくりしているのが腹立たしかった。
 井原先生も最初から最後までつき合った。ずい分長い時間をかけて、病とうに戻ったときはもう4時数分前。パパも後から来たらしい。一応の事を話して、次、欲しいものを言って、急がせるように帰ってもらった様だが、話したいコトいっぱいあったのに残念だ。

持ってきたもの:eat(のみそこない)新聞、塩分、「週刊FM」、「B.Cの1」
たのんだもの:モデルアート(あるかどうか捜してもらう)
 「ホビージャパン」(モデルアートがあったらいらない)、「ベートーベンの生涯」(もってくるかどうか分からない)、塩分(同)

 婦長さんに、ことごとく、病院の食事について話したら(つまり、マズイ・・・)、じゃあ高カロリー食にするかというので、ねだんが(高カロリー食なんてものをたのんで)高くなっても、親に迷惑をかけるから・・・と言うと、ねだんはそう変わらないとのコト。
 高カロリーはけっこうだけれども、今、僕が食べたいのは家の食事なんだよ。
 あす朝から、その高カロリー食とやらにかわるそうだが、いったい、どんなに高カロリーなのかみものである。(多分ごはんがよけいについである位だろう)
  ――
 もう始業2日目、勉強をやる日だろう。井原先生の口からはタイインのタの字も出ない・・・。
あと少し肺の検査をやりたいそうだ。あんな(きかんしぞうえい)ことを何度もされてたまるか!


 9月3日(金)  はじめて腹いっぱい
 高カロリー食。朝・珍しくねばり気のないごはんが出て食べ具合が良かった。これは(高カロリー食に)関係があるのかと聞いたらないらしい。他は、みそ汁の身が多くついていたくらい。あとは、つけものにふりかけで、結局、朝は別に関係なかったらしい。
 昼・ありがたいことに”ふつうのごはん”ではなく、西洋風のチャーハン(?)(つまりケチャップのごはん)でした。決しておいしいものとは言えないが、まずいものが一つもないのがありがたく全部いただけた。(もちろんサクランボのタネは食べない)

 高カロリー食としてチーズ(学給用)と牛乳がついた。(なんだ、”高カロリー食”という言葉はこれだけでつくのか)
 おかげで、これもたいらげると、どうもハラいっぱいで動けないくらい。全く久しぶりの満腹感であった。(朝、昼がよかったから夜になってがっかりするのが恐ろしい。)
 夜・おかずにジャガイモ、しつこい味(うまいわけではない)の肉(ブタだろう)、しつこい味のサカナなどが出て、ごはんもねばり気が別になかったので腹一杯食べさせてもらった。
 ふえたものは、例の味のブタらしき肉だろう。”高カロリー食”などといっても、そう、ごうかになるというわけでもないらしい。
 今日は平均的にいつもよりうまいものだったが、今度は、明日のごはんが心配になってきた。≪夜のデザートのブドウに、どういうわけかしょうゆがかかっていたゾ≫

 きのうの夜 熱をさます薬(アスピリンらしい)が出て、今日は、ようやく落ち着いているといった気分。午前中のうちに(まだ熱のひくいうち)録音をたのむ仕事、日記、英語の勉強をなんとかすませておく。うれしいことに、来週はベートーベンの交響曲が1・3・4・5・7に、レオノーレ序曲3番、バイオリン協奏曲などがあるのだ。もちろん、もっともこれが家のステレオで聞ければもっといいんだが・・・。

 昼ごはんを喰ったら、どういうわけかハラが一杯になって夕食時までラジオを聞きながらただ寝ているだけだった。でも、ずい分、いい気分だった。何しろ病院じゃ一時でも腹一杯にはなれないと思ってたんだから。

井原先生はごく簡単なしんさつをして帰って行った。もちろん、退院のタの字も、「そろそろ退院のコトでも・・・」のソの字も出てこない。

 

  • ==パパへ注文==

 9月8日 NHK-FM 水曜日
1:00【ステレオ・ホームコンサート】@バッハ/ブランデンブルグ協奏曲第2番ヘ長調(12’00”)演奏=カラヤン、指揮ベルリン・フィルグラモフォンM62145 Aモーツアルト/ピアノ協奏曲変ロ長調K595(30’20”)演奏ゲザ・アンダ(p.指揮)ザルツブルグ・モーツアルテウム音楽院管弦楽団同M G2207 Bベートーベン/交響曲第1番ハ長調op21(26’40”)演奏ハンス・シュミット=イッセルシュテット 指揮ウイーン・フィルロンドンSLC1985 Cブラームス/交響曲第4番ホ短調op98(41’50”)演奏=オットー・ゲルデス 指揮ベルリン・フィルグラモフォンM6 2214

3:00【FMジュークボックス】@第3の男 Aアラウンド
=さらに (木曜の面会の際、くわしい報告をする)=

 9月10日
☆金曜日 NHK
1:00 ステレオホームコンサート・ベートーベン交響曲第3番(英雄)(4’33”;)
☆土曜日 FM東京
12:00 FMコンサートフィル・ベートーベン交響曲第7番イ短調(38’30")
☆日曜日 NHK
夜8:00 ステレオコンサート @ベートーベン交響曲4番(後の方によい所あり!) Aベートーベン(リスト編曲)第5番「運命」(19'40")
 (上で下線をした曲)録音してもらいたいが、もし録音テープが少ししかなかった場合、金曜の”英雄”と”4番”が欲しいので(他は)断念してよし―――
ドビッシーの海はいらない。―――
「南太平洋」の裏面には何が入っていたか?

質問 メンデルスゾーン・ベートーベンなど著名の音楽家らのバイオリン協奏曲を録音したテープは、まだ、家に;とってありますか? 答えをたのみます!(友孝)


 9月4日(土)  いつもよりは食べた
 熱はあいにくなし。今日は漢字練習をする。土曜なので、いつものなじみのラジオ番組がオペラにつぶされてたいくつだ。
 朝食もいつもとそうかわっていない。昼食で、ミソ漬けの肉がよけいについたのだが、これはキライだ。一応、ミソをおとして2切れ食べたが、味がずい分キツくてかなわなかった。
 いつもよりは相当食べたことは確かだ。味がきのうよりおちたので、これからがまた心配になってきた。
 しかし、夕食がヤキブタにソーセージと出たので、やはり前よかおいしくなるんだろう。

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