鉄棒


 病気がちだった友孝に、鉄棒にも慣れて欲しいと、二人で近所の若葉公園に通いました。それから、
何日か経ってのことです。
 「パパ、学校で逆上がりができたよ」
 逆上がりができるようになるまでのことを、彼は、「新宿区立四谷第六小学校(第45回)卒業記念文
集『さくら』」に書いていたのでした。その全文を掲げます。

★ 作文 ★

ぼくの体とスポーツ

僕は、鉄棒の逆上がりが苦手だ。時々。体育で逆上がりをさせられるが、ぜんぜん出来ない。出来な
い人がたくさんいるのだったら、まだいいのだが、出来ないのは僕を入れてたった三人だ。

僕は生まれつき病気がちで体が弱かったので、運動することを禁止されてそだった。だから腕の力が他
人より劣っている。

ところが去年の秋ごろ、出来ない三人のうちの一人が突じょ僕の目の前で逆上がりをやった。ドキッとし
た。ついに、組では出来ない者が二人になった。それから僕はなるべく鉄棒をする習慣をつけた。毎朝六
時三十分ごろに起きて、近くの公園の鉄棒で練習した。

公園に着くとまずは一回やってみる。がっしりと鉄棒をにぎりしめ、心を落ち着かせて勢いよくけり上げ
る。力が足りないのか、上までは行かずに、どたっと落ちる。手に砂をまぶして、又やってみるが同じ結果
だ。腕の引きつけも弱く、腹が鉄棒に着くことさえも出来ない。何度も試みてみるがおしりが重い。鉄棒か
ら手をはなしてぐったりと砂の上にすわり、手に出来た豆をこする。

先ずは腕の力をつける事からはじめようと思い、斜めけいすいなどをやる。パートナーがいないので足が
すべる。次にうんていもやる。
 

最初のうちは、端から端まで渡れなかったが、くり返しているうちに、簡単に向こう岸まで着いて戻ること
も出来る様になった。うんていで、向こう岸に着いたら向こう岸のブランコにすわって一休みする。ゆれるブ
ランコに乗るのは、とても心の休まる思いがする。何回もこのような日をくり返すのだが、いつもあまり家に
良い知らせを持って帰る事が出来なかった。

寒くなって朝早く起きるのがつらくなったら、学校の放課後ひまを見て練習することにした。がんばるのだ
が、結果は同じだ。時々は、このままで行くと卒業までに出来ないのではないかと不安さえも起こる。
 

それから二週間程たった放課後、僕は、いつものように一人で練習を続けていた。なにげなく、エイッ
と、力を入れてけり上げたら、すうっと足から上がってくるっとまわった。ハッとして、そばにいた友達に「今見
た?」と聞いた。「いいや」と言ったので、夢かと思いもう一度やった。力いっぱいけり上げて強引に体を引
きつけたらやっぱり出来た!! 

その日はいつも立ち寄る図工室に行かずに、かばんを取ってすぐさま帰宅した。卒業するまで、とてもだめかと思っていた逆上がりが出来た!! これは僕にとっては大きな飛躍だと思う。

中学になっても不得手な鉄棒をもっとうまく出来るように、がんばろうと思う。努力、忍耐、訓練、という
ことは、これからの僕にとってだいじなことだと、つくづく思った。


 ページ先頭へ  前へ 次へ ページ末尾へ
inserted by FC2 system